黄銅棒の基礎知識
 
脱亜鉛腐食 (Dezincification)
脱亜鉛腐食とは?
脱亜鉛腐食とは、見かけ上合金中の亜鉛成分が優先的に溶解し、銅成分が母材に残存する脱成分腐食の一種です。一般に亜鉛成分が10%以下の銅合金では、脱亜鉛腐食はほとんどが発生しませんが、一般の黄銅材料は亜鉛含有量が30〜40%程度であるため、脱亜鉛腐食感受性を持っています。特に従来の快削黄銅棒や鍛造用黄銅棒は、α+βの2相合金であることから、脱亜鉛腐食感受性が高いといわれてきました。脱亜鉛腐食の形態は、ほぼ均一に合金内部に侵食していく層状型と、局部的に侵食していく栓状型に大別され、淡水環境下における黄銅の脱亜鉛腐食は、pHや塩化物イオン濃度、硬度や温度などに大きく影響を受けます。このことから、特に淡水環境下で黄銅材料を使用する際には、この脱亜鉛腐食を十分に考慮することが重要であるといえます。
脱亜鉛腐食している金属組織写真
紫色又は黒色部が腐食している部分。腐食は粒界に沿って進行しているのが認められる。
脱亜鉛腐食試験方法とその評価基準
黄銅材料の耐脱亜鉛腐食感受性を試験・評価する方法として、一般に以下の方法が用いられています。
1.国際規格(ISO 6509-1981)
1)試験方法
75℃、1%のCuCl2 (CuCl2-2H2O: 12.7〜12.8g/L) 溶液に樹脂に埋め込んだ試験片 (100mm²以上) を24時間浸漬した後、暴露面の最大脱亜鉛深さ及び平均脱亜鉛深さを測定します。
2)評価基準
ISO 6509には評価基準の規定がないので、一般にはEN規格(ヨーロッパ規格)を採用します。
グレードA:最大脱亜鉛深さ:200μm以下
グレードB:最大脱亜鉛深さ:400μm以下、平均脱亜鉛深さ:200μm以下
1)試験方法
0.5M-NaCl+5×10-3M-NaHCO3水溶液(NaCl:29.22g/L、NaHCO3:0.42g/L)に混合ガス(CO2+O2+N2:10:20:70)を通して飽和させます。この液(pH:6.5〜7.0)に白金電極(-)と暴露試料電極(+)をセットし、60℃の溶液の中に電流密度1.0mA/cm²で24時間通電後、暴露面の最大侵食さを測定します。最大侵食深さは、溶解腐食深さと脱亜鉛腐食深さを合わせて一番深い部分の値となります。

2)評価基準
適用する種別は、個々の製品規格で規定されるか受渡当事者間の協定により決まります。
評価ランク最大侵食深さ(μm)
第1種70以下
第2種100以下
第3種150以下